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このブログは永六輔こそ今いちばん面白いタレントだという認識の下、ただひたすら永六輔についてのみ書き綴る特殊ブログです。
このブログの記事はTBSラジオで土曜午前8:30から放送されているラジオ番組「土曜ワイド永六輔その新世界」の感想文と膨大に存在する永六輔の著作の書評によって主に構成されます。 なお、文中で「先生」という代名詞がインフレを起こしていますが、これはもちろん、永六輔先生を指しています。 カテゴリ
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2005年 11月 12日
本書は本年8月付に刊行された永先生の近刊。永先生の亡妻昌子さんへの手紙、男やもめになった先生に関する娘二人(永千絵、永麻里)の対談、この二人に在宅看護の看護士を加えた鼎談、矢崎泰久との対談、田原総一朗との対談、先生と谷川俊太郎、小室等との対談、先生の書き下ろしエッセイ、と様々な要素から構成されている。
さてその内容。テーマがテーマだけに本ブログで吟味したくなるような永先生の「お言葉」はあまりないのであるが、近しい人々の永先生に関する発言部分で興味深いところがいくつかあるので紹介したい。 ①娘からみた永先生 「千絵 でも私が一番心配なのはもっと別のこと―うちの父は、昌子さんのことをほんとうに愛していた。その思い入れが強すぎて、この頃いろいろと話したり書いたりしている昌子さん像が、実像とズレてきている気がするの」 (本書39ページ) 「千絵 物書きとして面白く物事を書こうとする傾向は、もともとあったけど。 麻里 でも最近はどんどん大げさになっているというか… 千絵 父の抱く昌子さん像と、娘ふたりの抱く昌子さん像がこんなに違っていいのかというほど食い違う。愛ゆえとはいえ、最近の孝雄君のズレ方はちょっと…これがボケの始まりじゃないといいんだけど(笑)。しかも、それぞれが昌子さん像を抱くだけならいいんだけど、父が発表する場を持つ身であることがネックで…と、かく言う私たちもこうして出てきて話しているけれど。」(本書40ぺージ) 永先生がある話を何度も話したり書いたりしているうちにその話を最初と全然違うものにしてしまう、という現象は当ブログ開設以降しばしば観測されており(たとえば「市川雷蔵」の項参照)、驚くにあたらないような気がする。しかし実は上記対談は昌子さんが亡くなって一年後の2002年になされたもので、我々が永六輔翼賛運動に身を投じ先生の片言隻句を収集しはじめる以前のものなのである。そうすると、当ブログでしばしば見られる永先生の虚言癖「リップサービス」は、比較的最近の特徴である可能性も出てくる。 私たちがしばしばその味覚を楽しんでいるこうした永先生の「リップサービス」は、言ってみれば永先生が咀嚼しているうちに発酵してアルコール分を生じた猿酒ならぬ「永六輔酒」みたいなもの(実際に想像すると気持悪いが)である。私たちはしばしばこれでベロベロに酩酊している訳であるが、もしこの永先生の特徴が比較的近年のものだとすると、私たちがたしなんでいる「永六輔酒」はけっこうボジョレーヌーボーなのかも知れない。まあだからどうということはないのであるが。 ②矢崎泰久からみた永先生 「矢崎 だって永さん、あなた、風呂に入るの、嫌いだろ。歯は磨かないだろ。顔はめったに洗わないじゃないですか。外から帰って来たって手も洗わない。そういう人間だってことを僕はよく知っているからね。これは奥さんが見てたらもううんざり。もう言うのをやめたのよ、彼女は。そう思わない? 永 思わない。 矢崎 言われたことないの? 永 言われません、そんなこと。 矢崎 そうでしょう?僕なんかもう毎日のように言われているんだから。結婚して以来ずっと 「あなた、汚い、臭い」とかね。 永 (笑)僕、矢崎さんが言うほど汚くないし臭くも無いよ。 矢崎 いや、そんなことはないよ。永さんを乗せて、俺は車で遠くへ行くことが何回かあった から知っているけれど、なんか変な匂いがするな、この車はどうしたのかなと思 うと、もとは永さんなんだよ、実は。永さんが降りるとその匂いがなくなるんだも の(笑)。」 (本書117~118ページ) 「根っからのギャンブル狂」を演じ切りたかった小沢昭一の「競馬歴五年」をラジオで発表した「暴露王」矢崎泰久の証言である。永先生、「なんか変な匂いがする」らしい。私は永先生を聴覚、視覚で感知したことはあるが、嗅覚でとらえられるまで近づいたことはない。一体どんな「変な匂い」がするのか、興味をそそられる証言である。 (永六輔『あの世の妻へのラブレター』 中央公論新社 2005年)
by h_motoda
| 2005-11-12 23:01
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